BEPEシリーズ・ガイドブック
目次
T.はじめに
U.二次元エリプソメータはこんな装置です。
●BEPEシリーズの基本思想は単純です。V.BEPE機を使ってみましょう
●BEPE機はこんな形の装置です。●QR120Kの使用法。W.これからのBEPEシリーズ
●BEPEシリーズのオプション。●BEPEシリーズはこれからこのように。T.はじめに
<二次元エリプソメータ>この新しい装置は新しい設計思想で作られたエリプソメータです。
固体の表面は特別に活性な物質相として半導体を中心としてさかんに研究されてきました。そのなかでエリプソメータは最も感度のよい膜厚測定装置の1つとして、そして屈折率も同時に測定できる装置として広く使われてきました。
ある方位角の直線偏光が固体に照射されると、原子の価電子が振動しそれによる双極子モーメントによって新たに電場が発生します。この双極子モーメントは外部からの電場(入射直線偏光)と他の双極子モーメントによる電場との重ね合わせに比例します。第1の層を通過した電場は同じく第2の層(つまり基板)の電子を振動させます。この第1、第2の層で発生する双極子モーメントによる電場の重ね合わせが反射楕円偏光として観測されます。この入射直線偏光と反射楕円偏光との変換行列を測定するのがEllipsometryの原理です。
固体の屈折率は原子の密度や分極率の関数です。屈折率を測定することによって基板や薄膜の均一性やその内部の構造欠陥の様子を知ることができます。
エリプソメータは表面技術の発展にとって重要な役割を果たしてきました。しかし、ますます薄い、そしてますます大きいサンプルを、より細かい解像度で測定することが求められるようになりました。そうなると従来の1点式エリプソメータでは限界があります。何か新しい技術的アイデアが必要なのです。
1点式エリプソメータでは当然測定できるはずの膜厚よりずっと厚い膜がその測定限界になってしまっています。それは次のような事情があるからです。
細部を観察しようとしてビームを細くするにつれ、回折効果によってビームの広がり角誤差が大きくなります。すなわち入射角誤差が大きくなります。
一方ビームの広がり角誤差が無視できる大きさのビーム径を使ったのでは、試料平面内の細かい不規則性が正確に観測できません。とくに薄膜の初期形成状態では、膜が島構造をなすので測定誤差が大きくなります。
U.二次元エリプソメータはこんな装置です。
まず試料全体に当たるような大きな面積をもった平行ビームを試料面に入射します。この大きな平行ビームは1点式エリプソメータの細かいビームを無数に二次元化したビームです。試料から反射された光は多画素子の撮像素子で観測します。これは1点式エリプソメータのフォトダイオードを数十万個も二次元化した素子、すなわち二次元エリプソメータです。
すなわち当社のBEPEシリーズとは、ビームを拡大され、数10万台の1点式エリプソメータが1台に集積化された二次元エリプソメータです。この単純な基本思想によって従来の1点式エリプソメータの様々の困難が一挙に解決できるようになりました。試料をスキャンさせる必要がないため、スキャナーの振動やピッチング、ローリングによって入射角誤差が生じません。そのため圧倒的な測定の高速性、試料面内の高分解能が実現できました。
BEPEシリーズのハードウェアはΔΨチャートが密集する領域のおいても測定可能範囲が広がるように考慮されています。
当社の二次元・エリプソメータは2つのアームからできています: 入射アームと反射アームです。入射アームは光源モジュール、偏光モジュール、コリメーターモジュールから構成されています。反射アームは、集光モジュール、検光モジュール、結像モジュールから構成されています。
レーザーダイオードからの光はコリメートされ次にグランテーラープリズムによって直線偏光にされます。偏光子を通過した光は試料面に照射されます。
試料から反射した光は集光レンズ系によって10oφの細いビームに変換され、ある適当な方位角に固定された検光子を通過します。検光子の前には水晶波長板を挿入することができます。検光子を通過した光は結像系によってCCDカメラ上に結像されます。
膜厚屈折率の計算は、屈折率の実部を独立変数として、そして膜厚の虚数部を誤差のパラメーターとして、誤差がゼロに近づくように準Newton法を使って逐次近似していきます。
スムースサーフェイスモデルはこの通常の膜厚屈折率計算です。計算時間は12万ポイントで10分ぐらいです。
STMやAFMのように試料の外部に基準座標を置くことによって表面の凹凸を測定する装置と違って、エリプソメータは基板表面を基準面とした薄膜の凹凸を測定します。
粗面の上に形成された膜のように散乱性の表面の場合は入射角を一定とした計算では不十分です。そのときはラフサーフェイスモデルで計算してください。ラフサーフェイスモデルでの計算は約4倍の計算時間を要します。しかしある種の膜の場合には有効であることが確認されています。
結像条件を満足するようにBEPEシリーズの光学系は設計されています。そのことは試料の各小部分の測定が互いに干渉せず独立な結果が得られることを意味します。そしてまた散乱性の表面についても撮像素子の各ピクセルの測定値と試料の小部分から発する反射光が対応することを意味します。そのようなときラフサーフェイスモデルで計算を試みてください。
多層膜を測定するときに、いくつかの入射角で測定することが測定パラメーターを増やす為に、行われています。しかし、斜入射光で入射角の異なる測定は互いに同一の試料位置を測定していると考えることはできません。入射角のコントロールは、測定精度の向上と試料の面内分解能の調整のために行われるべきです。
BEPEシリーズでは、新しいアルゴリズムで多層膜に対応します。
BEPEシリーズでは斜入射干渉の測定も可能になりました。BEPEシリーズには膜の屈折率が考慮されること、単色性で光強度が高いこと、その他、のような長所が熱放射光を光源とする干渉法と比べてあります。
Ellipsometryと干渉法、これら2つの原理の測定を膜の特質に応じて選択することができます。
図はSi基板上のSiO2を精細モジュールで測定したときの膜厚と屈折率の分布です。膜厚の山は徐々に高く、谷は徐々にくぼんでいくことがわかります。これが二次元エリプソメータで初めて見えてきた世界です。
計算と表示の分解能はソフトウェアで自由に設定できます。分解能を荒くして、そして平均化して計算することも、また細いままで分解能の計算点数を減らすことも、また試料の場所によって計算の仕方を変えることも、ソフトウェアだけで自由に設定できます。
12万ポイント10分から40分の計算時間は最大限です。計算点数を少なくすればそれに比例して計算時間は短くなります。ただし計算の分解能を荒くすると、BEPEシリーズでも微細な構造は消えてしまいこれまでの他の装置と同じように一様な膜厚がえられます。
QR120Kが試料全体を測定するときの正味の測定時間は約30秒です。それからΔΨの計算が終わるまで約1分です。(12万ポイント)。さらに膜厚、屈折率の計算まで10分から40分です。
測定だけを行って後ほど一括して計算するin situモード、ΔΨの計算迄で終わるデータストレージモード、膜厚屈折率の計算まで行う計算モードのいずれかを選ぶことができます。
またそれらのデータをBEPE機だけで計算処理することも、外部へデータを転送して外部の計算機で処理することも、またBEPE機と外部計算機で分担並行処理することもできます。
QR120Kを使えば40分以内で膜や基板の評価を終えることができます。同じことを試料をスキャンさせながら1点ごとに測定していけば1カ月もかかるでしょう。その間光源の波長を一定に保ち、電子回路のオフセットドリフトを0にし、その他機械的電子的な測定条件を一定に保つことは至難です。
BEPEシリーズでは、高速測定は高精度をも意味します。
二次元エリプソメータの実用化を可能にしたものは現代のハイテクです。
ビームを広げればそれに反比例して光の照度は低くなります。高出力で波長特性と波面特性が安定したレーザーと、CCD素子の多画素化高感度低雑音化がなければ二次元エリプソメータは実用化できなかったでしょう。
一方では大量の画像データを高速で処理できる大容量のメモリーを持った高速度で動作するコンピューターが登場してきました。
二次元エリプソメータはこれらのハイテクに支えられています。そしてまた今後のハイテクのトレンドと一致する装置であることはおわかりと思います。
半導体を中心とするこのような技術進歩にBEPEシリーズも貢献できることを願っています。
V.BEPE機を使ってみましょう
QR120Kの標準タイプは横1600 幅1000 高さ1824o の大きさです。
性能を第一に重視して無理な小型化を図りませんでした。ちょっと大きいのですが、機能ははるかに大型です。
BEPEシリーズはこの大きさに光学系本体とコンピューターなどの制御系を一体化しています。外乱光を気にしない完全カバーリング設計、椅子に座って楽々操作できる設計です。
載物台は直径8″の試料が測定できる大きさがあり表面の平坦度は1μ以下です。試料は載物台の上に水平に乗せてバキュームで吸着します。載物台は光軸と直角の方向に150oパルスモーターで移動できます。
家具のように研究室にさわやかな雰囲気をもたらすために、機械の色やカバーの形はみなさまのご希望に応じます。
装置のダウンサイジングは性能を第一に考えながら慎重に進めていく予定です。
エリプソメータは測定の前に基板の屈折率や、膜の屈折率の虚数部分などの条件を設定しなければなりません。それがエリプソメータをやや使いにくい装置にしていました。BEPEシリーズもやはり条件設定は必要です。けれどもそれでもできるだけ使いよくするために簡単測定モードを設けました。簡単測定モードではほとんどコピー機と同じようにキー一つで簡単操作できます。
側面の電源スイッチを入れると、システムの定数を自動測定し、システムの調整を行います。この間約2分ほどお待ちいただいたら測定可能です。
つぎに測定回数を入力します。測定回数は999回まで、または連続です。
スタートキーを押すと、ドアーが開いてローダーが手前に移動します。載物台にえがかれている主フラット位置を大体の目安に試料のオリエンテーションフラットをあわせて乗せてください。
もう一度スタートキーを押すとドアーが閉まりローダーは標準位置に移動して測定を開始します。
対話測定モードでは条件設定と、より複雑な測定やディスプレイのセッティングを行うことができます。
QR120Kのキーボードは操作に必要充分な最小限度です。
W.これからのBEPEシリーズ
弊社の二次元エリプソメータの光学系は機能別にいくつかのモジュールに分かれていて、そのモジュールをパーツとして交換することによって簡単にグレードアップできます。
今準備中のオプションの第1の種類は結像系モジュールです。
表面をより精細にとらえるための精細モジュールによる分解能は0.05×0.15oです。分解能を連続的にコントロールするためのズームモジュール、光を斜めに当てることによるXYの分解能の違いを1:1にするための等倍モジュールも準備中です。
オプションの第2の種類は高速測定用偏光モジュールです。これを入射側の偏光モジュールと交換して取り付ければ、約5秒で試料全面の測定ができます。
オプションの第3は分光モジュールです。入射光源を大きく切りかえて多波長の分光エリプソメータを可能とします。
ビームを広げたエリプソメータ、BEPEシリーズはこの思想の下に次のように発展していきたいと考えます。
まず試料を自動ローディングできるようにします。この機構では装置もさらに小型化するはずです。
高解像度のHDTV用カメラによってさらに新しい可能性が開けることが期待できます。
また多波長での測定も開発テーマです。(特許出願中)
そして一方では二次元エリプソメータの高速性を生産ラインに生かしていきたいと考えています。